年代記(一)

 本書は旧筑前福岡藩領各地に残存する年代記をおさめる。
 年代記は簡潔に歴史的事件、事象を編年体に列挙した記録で、歴史の流れを大観して現在の自己を歴史的に認識するとともに、子孫へ伝えるべき大切な知恵であったと思われる。とくに村、町や家の文書、あるいは自己、近親者の体験や見聞、伝承に基づいて記述され、土地に根ざして記録されているために、たとえ小地域とはいえ年代的に一貫して歴史を見ることができる。支配者側の統治的史料その他の史料に全く見ることができない記述さえ見出すこともできるのである。
 本書第一巻には、藩全体として「筑藩御年譜集要抄」(小田文書)、志摩郡の「自天正寛文年間古記」(朱雀文書)、遠賀郡の「村用集」(大和文書)・「筑州鎮守岡郡宗社志」(九大附属図書館蔵)、鞍手郡の「萬年代記帳」(林文書)・「歳代記録」(古田文書)、糟屋郡の「尾仲邑記録」(藤木文書)、宗像郡の「年代記」(桑野文書)など近世前中期、福岡藩の東部・北部のものを収録・校註し、解題を加えた。